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修復方法調査報告書

建築工房 1級建築士 平山勝

  竣工時より、修理をしたという形跡はありません。

 昭和34年の伊勢湾台風によって、破損しておりますが、そのまま放置しておいたと考えられます。非常に残念です。
  のちに借り住まいをしておられた方が、紙や網などをはりつけたようですが、これは建物にたいしてはなんの関係もありません。
  とにかく、中埜半六氏の趣きの深さが窺えられる建物と、いっていいでしょう。
  当時としては、相当な費用が懸かったでしょうが、半六氏にとっては、犬小屋を建てたくらいの感覚であったのかもしれません。

  全体に観てみますと、深刻な雨漏りは1ヵ所だけです。
しかしながら、袖壁4ヶ所が破損、は5ヵ所が破損しています。
  すべて修理が必要です。
  障子はすべて発見できましたが、使用できるかどうかは疑問です。
  ともかく、洗いと紙張りは、どうしても必要です。
  問題は、床から50センチほど、すべての壁が破損していることです。
  伊勢湾台風の浸水によるものであることはまちがいありません。
  修復が必要ですが、色が変わっただけのところは、大丈夫です。
  しばらくのあいだは、そのまま使用できるでしょう。

 部屋ごとに見てみます。

立面図 平面図

 1・水屋について 

入口は、のちに継ぎたしたようで不自然なつくりです。
土間のかたちがいびつな感じがしますし、狭いですね。
框のところに雨漏りがあり、木が腐っています。
雨漏りの個所は、小屋根の西端の破損部分です。
ここから梁まで雨が洩れ、腐らせています。
補修するためには、瓦をおろして棟をつくりなおさなければいけません。
相当に費用のかかることとおもわれます。
また、水屋の板縁と茶室の床脇の仕切りになっている建具ですが、発見できませんでした。
なんらかのかたちの仕切りをもうけなければいけませんね。


 2・控えの間について

雨漏りはほとんどしておりませんが、畳は腐っております。
使用不可です。とりかえなければいけません。
西側の雨戸はありません。
南側の窓および壁の仕上げが落下しています。修理が必要です。
南面の袖壁は破損しています。
西面の袖壁も破損しています。
北面の袖壁ふたつと待合席も破損しています。
すべて修理が必要ですが、これは左官仕事です。費用が要ります。


 3・厠について

瓦屋根が中央部分から破損しています。
そのため、屋根全体が、茶室から剥離しています。
男子の小用のためのみの厠ですので、撤去するのが良いでしょう。
この厠は接続してはおりますが、撤去するのは難しくありません。
庭を清掃し、配管をたしかめたうえで、
すべてを撤去していくのがいいとおもわれます。


 4・茶の間について

雨漏りはしていません。 床の一部がゆるくなっていますが、修復は可能です。
櫨の木が根をのばして、縁の下まで来ています。
また、枝が瓦をおしており、破損しかけています。
即刻、櫨の木は撤去したほうがいいとおもわれます。
畳はありませんから、いれなければいけません。
爐もありませんから、つくりなおす必要があります。
雨戸は無くなっていますが、その東端の板張りも杉皮も良好です。
ですから、雨戸をいれることと、敷居の補修が必要です。
いちばんの問題は、床です。
水屋の小屋根の雨漏りのため、中心部分が破損しています。
応急処置をほどこさなければなりませんが、木そのものが腐っており、壁が剥落しています。
ともかく、水屋の雨漏りだけは早急な処置が必要です。



 つぎに工事の項目ごとにお伝えしておきます。

 1・仮設工事

イ)とりあえず、靴を脱いで上がれるように掃除すること。
ロ)ゴミの処分をすること。畳、襖など。
ハ)破損部分の撤去処分をすること。
  現在はお化け屋敷状態ですが、破損部分を撤去するのが肝要です。
  すこしは見栄えがよくなります。
  どれだけの修理をするか、方針を決めましょう。
ニ)爐をつくらなければ、お茶会はできませんから、これは必須です。


 2・木工事

イ)床下地および畳下地は使用可能です。
  束石も使用可能です。
  ただし、レベル調整の必要があります。
  束のとりかえも必要となってくるでしょう。
ロ)敷居および鴨居は、
  本来ならば、取替もしくは入替をしたいです。
  ただし、建具の使い方によっては現行のままでも充分です。
ハ)外部についてですが、
  庇は、全面撤去のうえで修復するべきです。
  修復が不可であれば、とりあえず撤去するべきでしょう。
  壁は、西側上部の杉板(一部)は補修が必要です。
  竹細工の取替です。
ニ)厠については、さきに触れたとおりです。
ホ)戸袋は、雨戸がないため、そのままにしておいていいでしょう。
  ただし、雨戸は、ほんとうは必要かとおもいます。
ヘ)袖壁は、現行のままでもさしつかえありませんが、
  強度をもとめるならば、必要でしょう。
  また、茶室としての調和をもとめるならば、必要でしょう。
  なににしても、専門の左官さんがいなければ話になりません。


3・左官工事

イ)瓦屋根と漆喰(黒)の修理ですが、
  瓦の破損について、厳重な注意が必要です。
  プロのひと以外は、屋根にはのぼらないようにしてください。
ロ)壁についてですが、
  破損個所の部分的な補修は不可です。
  下地(小舞壁)まで撤去し、プラスター用下地をいれなければいけませ  ん。
  砂、プラスター(のれん)、プラスターと3回の仕上げが必要です。


 4・建具工事

イ)障子
  つくりがとても良いです。
  職工さんの腕のレベルがよほど高かったのでしょう。
  桟の破損部分がありますが、紙の張替は可能です。
  そのまま使用するべきでしょう。
  水で徹底的に洗い、日陰干しをするべきです。
ロ)雨戸
  必要だとおもいますが、予算がなければ無しのままでも可です。
ハ)
  紙をとってみなければなんともいえませんが、おそらく、使用は不可能  です。
  新調するよりほかにないとおもいます。
ホ)捕捉事項として
   すべての建具については、調整が必要かとおもいます。


 5・瓦工事

イ)厠および水屋上部の屋根の修復もしくは撤去。
ロ)板縁の雨漏り個所の点検は即時おこなうべきです。
ハ)部分的な修理というのは、本来、やめたほうがいいとおもいます。


 6・美装工事

イ)最低でも畳だけは、9枚、新調するべきでしょう。
ロ)徹底的かつ丁寧な掃除は、必須です。



 以上、とりあえず、ご報告します。


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